万葉の草花#003 ヒガンバナ

久しぶりの更新です。
まぁでも、今か今かと待っている方はいらっしゃらないでしょうから、マイペースでやっていきたいと思います。

今回取り上げる万葉の草花は、「ヒガンバナ」

路の辺の 壱師の花の いちしろく 人皆知りぬ わが恋妻を 

―柿本人麻呂歌集(巻11‐2480)

(歌意)道のほとりに咲く壱師の真っ赤な花のように、人がみんな知ってしまった。私の美しい妻を。

壱師の花」といのはヒガンバナのことです。
長らく「壱師の花」とは何の花だろうと、いろいろな説が入り乱れていたそうですが、朝ドラでも話題になった植物博士、牧野富太郎さんの調査により、ヒガンバナの事だと判明しました。

万葉集でヒガンバナを詠んだ歌は、この一首だけだそうです。意外ですよね。
漢字で「彼岸花」と書いたり「曼殊沙華」などと仏教用語のような立派な別名があるので、もっとたくさん詠まれているのかと思いました。

ヒガンバナには他にもたくさん別名があって、「幽霊花」「死人花」「捨子花」「火事花」「歯抜け婆」など、ぱっと見、どれひとつ安心できるものがありません。
「歯抜け婆」なんて一体どういうことだと思いますけど、とにかく昔の人は、ヒガンバナにあまり良いイメージは持っていなかったのは確実ですね。

私も正直、ヒガンバナの「しべ」が長くてたくさんあるところが、ちょっと気持ち悪いと思ってしまいます。虫の触覚というか脚みたいで。
遠くから、赤い絨毯のように広がる群落を見ると、確かに美しいと感じるのですが。

参考文献:「万葉の花100選」大貫茂(淡交社)

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こちらも「ヒガンバナ」の写真です。


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