万葉の草花#002「ゆり」
「万葉の草花」というネタを見つけて、これでしばらくブログ更新に困らないと思っていたのですが、ひとつ誤算がありました。
二十四節気のように特定の日が決まっていないので、なかなか更新作業をする重い腰が上がらずでして・・・
とはいえざっくり季節ごとのくくりはあるわけで、完全に秋に移行する前に、慌てて「夏」の万葉の草花を更新したいと思います。
さて今回選んだ万葉の草花は「ゆり」。
ゆりは万葉集では「さ百合」「百合」「草深百合」などの名で10首詠まれています。
あぶら火の 光に見ゆる わがかづら さ百合の花の 笑まはしきかも
―大伴家持(巻18‐4086)
(歌意)私がつけた百合のかづら(髪飾り)が油火の光りに輝いていて、とても微笑ましいことですね
ゆりが詠まれている10首のうち5首は大伴家持が詠んでいます。
この歌は、越中国(現在の富山県のあたり)の官人、秦石竹から贈られた百合の花で作られた髪飾りを見て詠んだもの。
大伴家持は越中国に5年ほど暮らしていたそうですが、ゆりを詠んだ歌は全てその期間に作られたのだとか。
ところで、日本は世界でも百合の原種が多い国として知られていますが、万葉集には百合を詠んだ歌がわずか10首しかないというのは意外に少ないですね。
万葉集で最も多く詠まれた花は「萩」で、その数は約140首にのぼります。
当時は小さく可憐な萩のような花が好まれて、派手な色合いで大ぶりなゆりの花は、いくら身近に咲いていても、あまり刺さらなかったのかも。と想像してみたり。面白いですね。
参考文献:「万葉の花100選」大貫茂(淡交社)
★きょうの健康9月号発売中!
巻頭連載「くらし二十四節気」の写真を担当しています。
2024-08-29 by
関連記事
コメントを残す